「天丼」という言葉を聞くと、多くの人は海老や野菜の天ぷらをのせた丼料理を思い浮かべるでしょう。
しかし、お笑いの世界で使われる「天丼」はまったく別の意味を持つ業界用語です。
ここでは、お笑い用語としての「天丼」の意味や使い方、由来、そして日常会話での応用例までわかりやすく紹介します。
お笑い用語「天丼」の意味・由来
天丼の意味
お笑い用語の「天丼」とは、ひとつのネタやボケを繰り返して笑いを取るテクニックのことを指します。
同じボケやツッコミをあえてもう一度行うことで、観客に「また来た!」という期待と安心感を与え、笑いを生み出します。
つまり、「繰り返しによる笑い」を演出するための手法が「天丼」です。
たとえば、芸人があるフレーズをボケとして言ったあと、少し間を置いて再び同じことを言う──これが典型的な「天丼」です。
一度目よりも二度目の方が面白く感じられるよう、テンポやタイミングが非常に重要になります。
「天丼」という言葉の由来
この「天丼」という言葉は、料理の「天丼(てんどん)」に由来しています。
料理の天丼は、ご飯の上に天ぷらをのせ、その上にさらにタレを“もう一度かける”というスタイルが特徴です。
つまり、「同じものをもう一度重ねる」という発想から、「ボケを重ねる=天丼」と呼ばれるようになりました。
お笑い業界らしいユーモアと語感の良さが、そのまま業界用語として定着したと言われています。
「天丼」と「しつこい」との違い
初心者がよく勘違いするのが、「同じネタを繰り返す=しつこい」と思われることです。
しかし、天丼は“同じことをただ繰り返す”のではなく、意図的に繰り返して笑いを引き出す技術です。
タイミングや間の取り方、観客の反応を見ながら繰り返すことで、「計算されたしつこさ」が笑いに変わります。
そのため、プロの芸人ほど「天丼」の使い方が巧みで、絶妙なバランスを保っています。
天丼の使い方と実例
天丼の使い方
実際の舞台やテレビ番組では、次のような使い方が見られます。
たとえば、漫才コンビの一人が「お前それ、どんな顔して言うてんねん!」とツッコんだあと、
しばらくしてまた同じツッコミを繰り返す。
観客は「またそれ言うんかい!」と予想しながらも、二度目で笑ってしまう。
この「分かっているのに笑ってしまう」構造こそが、天丼の醍醐味です。
テレビバラエティでも、同じギャグを複数回繰り返すことで笑いを誘う場面があります。
たとえばダウンタウンやさまぁ〜ずなど、ベテラン芸人が意識的に同じフレーズを重ねて笑いを作るのも、まさに「天丼」の典型です。
日常会話での「天丼」的な使い方
お笑いの専門用語である「天丼」は、一般の会話でもユーモラスに使われることがあります。
たとえば、同じ冗談を繰り返す友人に対して「それ天丼やん!」とツッコミを入れることで、場が和みます。
会話の中で軽く使うことで、笑いを共有するきっかけにもなります。
天丼の効果:なぜ繰り返すと笑いが生まれるのか
心理学的にも、繰り返しは「親近感」や「期待感」を生み出すとされています。
一度目に笑ったポイントがもう一度来ることで、人は「来た来た!」と反応し、再び笑いやすくなるのです。
また、繰り返すうちに微妙な変化(言い方や表情の違い)が加わることで、新たな笑いが生まれます。
このように、「天丼」は笑いの構造を巧みに利用した高度なテクニックなのです。
似たお笑い用語との違い
「天丼」と似た用語に「フリ」や「オチ」がありますが、役割は異なります。
「フリ」はボケのきっかけをつくる導入、「オチ」は笑いの結末。
その中間にある「繰り返しの笑い」が「天丼」です。
つまり、フリとオチを強調するための“補強”として機能するのが「天丼」と言えます。
まとめ:天丼はお笑いの「味付け」
「天丼」とは、同じボケやツッコミを繰り返すことで笑いを生む、お笑い独特のテクニックです。
名前の由来は料理の「天丼」からきており、「同じものをもう一度重ねる」という発想がユーモラスに転用されました。
使い方を間違えるとしつこく感じられますが、間やタイミングを意識すれば、笑いの“旨味”を最大限に引き出すスパイスとなります。
まさに、お笑いの世界における「味の決め手」――それが「天丼」なのです。