日本語には、同じ読み方なのに漢字が異なる言葉が多く存在します。その中でも、「あわせる」という言葉は混乱の元になりやすい代表格です。「合わせる」と「併せる」、どちらを使うのが正解なのか悩んだことがある方も多いでしょう。
実はこの2語、ニュアンスが似ているようで微妙に使い方が異なります。この記事では、それぞれの意味や使用場面をわかりやすく整理し、迷わず選べるようになるためのヒントをご紹介します。
「合わせる」:何かに“ピッタリ重ねる”感覚
「合わせる」は、物や情報、人の動きなどを“重ねる・そろえる・調和させる”といった意味で使われます。中心となる基準があって、そこに他の要素を加えるようなイメージです。
- 例:時計の時刻を合わせる
- 例:相手の意見に自分を合わせる
- 例:手を合わせてお祈りする
「調整する」「フィットさせる」「すり合わせる」など、主役や中心に“寄せる”動きがある場合は、「合わせる」を使うと自然です。会話や文書でもよく使われる、スタンダードな表記と言えるでしょう。
「併せる」:複数を“並列または統合”する感覚
一方「併せる」は、似たレベルの複数の要素を一緒に扱ったり、統合したりする場合に使われます。特定の基準に寄せるというより、横並びにして扱う・一つにまとめるというニュアンスです。
- 例:二つの事業を併せて進める
- 例:複数の選択肢を併せて検討する
- 例:A案とB案を併せた新プラン
「併合」「併設」「併記」などの熟語をイメージすると、使い方がわかりやすくなります。文語的・フォーマルな印象が強いため、ビジネス文書や丁寧な表現を心がける場面では「併せる」を選ぶと好印象です。
両者の違いをわかりやすく整理
漢字 | 主な意味 | イメージ | 主な使用例 |
---|---|---|---|
合わせる | 調整・一致・調和 | 何かに合わせる(fit) | 時刻を合わせる、人に合わせる、声を合わせる |
併せる | 統合・同時進行 | 並列・ミックス(mix / side by side) | 資料を併せて提出、併願受験、二部門を併せる |
判断に迷ったときのチェックポイント
以下の基準をもとに選べば、ほとんどのケースで間違いを避けられます:
- 何かに合わせる → 「合わせる」(時刻・基準・人など)
- 複数のものをまとめる・並行で使う → 「併せる」
例えば「会議のタイミングをあわせる」は、「会議」に“合わせる”という調整の意味なので「合わせる」。一方で、「部門A・Bを併せて新部署にする」は、同等の組織を統合する意味なので「併せる」が適切です。
それでも迷うときは?
日本語には「迷ったら平仮名で逃げる」という裏技があります。「手をあわせる」「気持ちをあわせる」など、どちらでも不自然でない場合は、あえて「ひらがな表記」で柔らかくまとめるのも一つの方法です。
まとめ:言葉のニュアンスを見極めて、伝わる表現を
「合わせる」と「併せる」は、どちらも「物を一緒にする」動作を表しますが、使い方を間違えると意味がぼやけてしまいます。大切なのは、その場面で“どんな関係性”があるのかを見極めること。
基準に寄せるなら「合わせる」、対等なものを統合・並行するなら「併せる」。
この判断軸を持つことで、あなたの日本語表現は一段と洗練されたものになります。